小樽で過ごす、大人のレトロステイ|硝子と海の街でひと息つく一泊二日の妄想
僕は札幌に住んでいる想定で妄想している。
読者の方々は飛行機で飛んで来るのもよし。歩いてくるのもよし。車で来るのもよし。
自分の住んでいるところから、出発する妄想をして欲しい。
■ 金曜の夜:静けさを求める心の準備

仕事を終えて外に出ると、札幌の夜風は少し冷たい。
駅までの帰り道、ふと空を見上げて思う。
「どこか遠くへ行きたい。でも、遠すぎない場所へ。」
そんな気分にちょうどいいのが、小樽。
札幌からたった40分。
でもそこは、時間の流れがゆるやかにほどける、別世界のような街だ。
■ 土曜の朝:レトロ列車で始まる小さな旅

朝9時の快速エアポート。
窓の外を流れる石狩湾の青が、少しずつ濃くなっていく。
カタコトと揺れる車内で、缶コーヒーを片手にぼんやり外を眺める時間。
それだけで“旅が始まった”という実感がわいてくる。
■ 到着:港町の香りと硝子の光
小樽駅の改札を抜けると、潮の香りが鼻をくすぐる。
坂道の向こうに見える海が、やけに近く感じる。
石造りの建物が並び、通りを歩くだけで昭和にタイムスリップしたよう。
まずは腹ごしらえに「三角市場」へ。

威勢のいい声が響き、丼ぶりの上でウニとイクラが輝いている。
スプーンでひと口。
冷たい海の味が広がり、思わず目を閉じてしまう。

——ああ、これが“小樽の朝”なんだ。
■ 午後:ガラスとオルゴールの街を歩く
お腹を満たしたら、堺町通りへ。
観光客が行き交う中で、北一硝子のショップに入る。
天井から吊るされたランプが、陽の光を受けてきらめいている。

グラスを手に取ると、指先に冷たい感触が伝わる。
その繊細さに、思わず息を呑む。
少し歩くと、オルゴール堂の前にたどり着く。

扉を開けた瞬間、ふわりと流れる優しいメロディ。
手のひらサイズのオルゴールを回すと、小さな音が心の奥に響く。
忙しい日々の中で、いつの間にか聞き逃していた“静けさの音”だ。
■ カフェでひと休み:「ルタオ本店」
観光通りの坂を上がった先にある白い建物。
「ルタオ本店」の2階カフェに入り、人気のチーズケーキ“ドゥーブルフロマージュ”を注文する。

スプーンを入れるとふわりととろけて、口いっぱいにミルクの香りが広がる。
窓から見える小樽の街並みを眺めながら、心の声がぽつりと漏れる。
「遠くへ行かなくても、ちゃんと休める場所ってあるんだな。」
■ 宿:「運河の宿 おたるふる川」
夕暮れ時、小樽運河沿いに佇む宿へ。

柔らかな灯りが水面に映り込み、風が少し冷たくなる。
チェックインを済ませて部屋に入ると、木の香りが迎えてくれる。
畳の上でスリッパを脱ぐ瞬間、心まで解放されるようだ。
窓を開けると、運河の石壁に反射するオレンジの光。
檜風呂にゆっくり浸かりながら、静かに湯の音を聞く。
何も考えずに、ただ「今ここにいる」感覚を味わう。

■ 夜:運河と星のあいだ
夕食後、少しだけ外へ。
運河沿いの遊歩道を歩くと、水面に灯りが揺れている。
観光客の声が遠ざかり、聞こえるのは波の音と靴音だけ。
手袋の中の指先が少し冷たい。
でも、その冷たさが「生きてる実感」に変わる。
ホテルに戻ると、玄関前の足湯が冷えたカラダを出迎えてくれた。

部屋に戻り、灯りを落として静かに眠る。
■ 日曜の朝:静寂の中で味わう朝食
朝、運河の光がカーテンの隙間から差し込む。
朝食会場では、湯気を立てる味噌汁と焼き魚の香り。

地元産の米がつやつやと輝き、味噌汁の湯気が心まで温めてくれる。
「これだけで十分だ」と思える朝。
チェックアウトを済ませ、再び街へ。
ガラスの工房で小さなグラスをひとつ買い、
「また来ます」と心の中でつぶやく。
帰りの列車、窓の外を流れる青い海。
旅の終わりは、少しの寂しさと、ほんのりした満足感。
日曜日の夜、札幌に戻る頃には、もう次の週末が楽しみになっている。
■ 旅のまとめ
- 旅先: 小樽(札幌から約40分)
- 宿泊: 運河の宿 おたるふる川
- 名物: 海鮮丼・ルタオチーズケーキ・北一硝子
- 体験: ガラス体験、オルゴール堂、運河散歩、檜風呂
- 予算: 約20,000円前後(一泊二食付き+交通費)

