仙台城下町で「何もしない贅沢」とひとりハシゴ酒
金曜夜:札幌駅で、まずは日常を脱ぐ
金曜の定時。
パソコンのシャットダウン音と同時に、
俺の心の電源も落とす。
「お先に失礼します」と言いながら、
本当に失礼するのは、この街そのものだ。
スーツはロッカーに押し込み、
リュック一つのオジサン仕様に着替えて札幌駅へ。
仕事のチャットも、未読のメールも、
今日はもう知らんふりだ。
JRに揺られて新千歳空港、
そのまま夜の便で仙台行き。
機内サービスのドリンクを一口飲んだところで、
「これはもう出張じゃなくて、妄想出張だな」
と、誰にも聞こえない声で呟く。
やがて、
窓の外は真っ暗な海と街の光だけになって、
北海道と東北の境目なんて
とうに見えなくなっていた。
金曜深夜:仙台駅前に、オジサンひとり着地

仙台空港に着いたら、
アクセス線に揺られて仙台駅へ。
電車の窓に映る自分の顔が、
いつもの金曜夜より、少しだけ柔らかく見えるのは気のせいか。
仙台駅に着く頃には、
札幌での「さっきまで」が、遠い昔のようでさえある。
金曜深夜:ペデストリアンデッキの先にある「俺の城」
仙台駅に到着したのは、もう夜。
新千歳からのフライトとアクセス線を乗り継いで、
ようやく辿り着いた東北の玄関口だ。
改札を抜けて、
そのままペデストリアンデッキへ。
タクシー乗り場の灯りと、
バスプールに並ぶテールランプを見下ろしながら、
ひたすら前へ歩く。
デッキから見えるビルのひとつに、
白い文字で「HOTEL JAL CITY 」。
今夜から二泊、あそこが「オジサンの城」だ。

エントランスに入ると、
外の騒がしさがすっと背中の方へ遠ざかる。
フロントでチェックインを済ませ、
カードキーと一緒に、
「仙台での二日間」という小さな自由を受け取る。
エレベーターで客室階へ。
廊下は静かで、
さっきまでの移動のざわざわが嘘みたいだ。
部屋に入ると、
ほどよい広さのベッド、
シンプルで落ち着いた内装。
「さすがJAL」と言いたくなるような、
きちんと整ったビジネスホテルの空気。

スーツケースを転がして、
ベッドに腰を下ろして、
そのまま後ろに倒れ込む。
「ここまで来たら、
もう今日は何もしなくてよし。」
シャワーだけ浴びて、
冷蔵庫にはあえて何も入れず、
仙台一日目の夜は、
JALシティ仙台のベッドの上で終わっていく。
ここからの2日間、
俺は「何もしない贅沢」をするためだけに、
この街で過ごすのだ。
土曜朝:仙台城跡で「何もない」を味わう
翌朝。
ホテルのカーテンの隙間から差し込む光に起こされて、
時計を見ると、
いつもの出勤時間よりちょっと遅いくらい。
急ぐ理由が何ひとつない朝というのは、
どうしてこんなにうまいのか。
移動ルートのイメージ(何もしない前提)
- 仙台駅西口から
中央バス(ブルーライン)で「仙台城跡前」や「広瀬通」方面へ
→ 青葉通を歩いて、城下町エリアへ歩くスタイルがオジサンっぽい。 - 若い人は「地下鉄でどかんと向かう」らしいが、
オジサンは「バスと歩く」で、
移動時間も贅沢の一部に変換する。
仙台駅からバスに乗り、
ゆっくりと街を抜けていく。
高層ビルが少しずつ減って、
緑が増えていくと、
ついに「仙台城跡」の文字が見えてくる。
ここ、仙台城跡。
観光サイトの評判は、
「正直、あまり何もない」。
だが、
その「何もない」が、
今日の俺にはごちそうだ。
石垣と広場、
伊達政宗の騎馬像、
その向こうに広がる仙台の街。


ベンチに腰掛けて、
風の音と遠くの車の音を聞きながら、
ただぼんやりと、街を見下ろす。
「ここで政宗公は、どんなこと考えてたんだろうな」
歴史の授業で覚えたことなんて、
ひとつも思い出せない。
それでも、
この高さから街を眺めていると、
自分の人生を、
少しだけ俯瞰できたような気がしてくる。
10分、20分、30分……
スマホは時計代わりにしか使わない。
写真も撮らない。
「来た記録」は、この目と、
ちょっと疲れたオジサンの脳だけでいい。
土曜昼:城下町をブラブラ、「普通の昼飯」を一杯
城跡を後にして、
坂をゆっくり下りながら街へ戻る。
観光パンフレットには載らないような、
住宅街と古い店が入り混じった道を選んで歩くのが、
オジサン流の「寄り道」。
やがてビルが増え、
車の音が大きくなってきたら、
仙台駅方面の城下町エリアだ。
今日の昼飯は、
名物とか有名店にはあえて行かない。
駅から少し離れた小さな蕎麦屋、
もしくはラーメン屋に、
ふらっと入る。
暖簾をくぐった瞬間、
常連らしきオジサンたちが、
新聞と丼の間から一瞬こちらを見る。
すぐに「よそ者」への興味を失って、
またそれぞれの麺に戻っていく。
いい。
この温度感がいい。
カウンターの端に座って、
ざる蕎麦かシンプルなラーメンを注文する。
特別うまいとかどうとか、
そんなことは、
もうどうでもいい。
「伊達家の城下町で、俺はただの昼飯を食っている」
それだけで、
十分すぎる妄想の燃料だ。
土曜午後:エキナカカフェで、何もせず座る
仙台駅まで戻り、駅ビルの中をぶらぶら。
新幹線ホームへの案内板、
お土産の牛たん、ずんだ餅、
観光客で賑わう売り場と、
それを横目に通り過ぎる自分。
「観光客で来てるのに、観光しないって、なんか贅沢じゃないか?」
エキナカのカフェに入って、コーヒーを一杯だけ頼む。
本を読むでもなく、
スマホゲームをするでもなく、
ただ、店の窓から見える人の流れを眺める。
旅行者、出張族、家族連れ、学生。
みんな何かの行き先に向かっていて、
そのどれにも属していない自分が、
この瞬間だけ、妙に自由に思えてくる。
「何もしないで座ってるだけで、コーヒー代を払うって、
これ以上に贅沢な金の使い方、あるかね」
そんなことを考えながら、
カップの底が見えるまで、
ゆっくり時間を飲み干す。
土曜夜:国分町で、オジサンひとりハシゴ酒
そして、夜。
仙台駅から、
夜風に押されるようにして、
国分町方向へ歩き出す。
ネオンの光が、
雨でもないのに路面を濡らしたように反射して、
人の声と車の音が混じり合う。
福岡の中洲ほど派手じゃない。
けれど、
この街にもちゃんと、
「夜の大人の居場所」が息づいている。
1軒目:駅前の個室で静かなスタート
一軒目は、
仙台駅前のビル地下にある
「隠れ家個室居酒屋 焼き鳥と東北郷土料理 夜酔 仙台駅前店」。

個室に通されると、
壁の向こうから、
誰かの笑い声や箸の音が聞こえてくる。
でも、直接顔は見えない。
この「距離感」がちょうどいい。
まずは、東北の地酒を一合。
肴には、
仙台らしい一品をひとつだけ。
「一軒目から腹を満たすつもりはない。
今日は、
心の方を満たす日だからな」
そう言い訳をしながら、
ゆっくり、ゆっくりと盃を傾ける。
2軒目:「鳥たかハナレ」で焼き鳥と炭火を見る
少し歩いて、
路地の奥に灯る提灯の明かりを目印に、
「鳥たかハナレ」へ。
カウンター越しに見える焼き台。
炭火の上で、
串に刺された鶏たちがじわじわと音を立てる。

ここでは、
レバー、ねぎま、皮を一本ずつ。
飲み物は、
すっきりしたレモンサワーで。
「火を見つめてるだけで、
大体の悩みは、
どうでもよくなってくるな」
焼き上がりを待ちながら、
炭火と煙を眺めていると、
パソコンの画面を見ていた昨夜の自分が、
別人のように思えてくる。
一口かじると、
焦げ目の香りと肉汁が、
舌と胃袋に「おつかれ」と言ってくれる。
3軒目:「大人たちの隠れ居酒屋 四葉」のカウンターで妄想に沈む
階段を上がった先にある
「大人たちの隠れ居酒屋 四葉」は、
ちょっと隠れ家っぽい雰囲気の串焼き屋。
カウンター席に腰を下ろすと、
店員さんがさりげなく水とお通しを出してくれる。
この「さりげなさ」が、オジサンにはありがたい。

ここでは、
日本酒を一合。
香りの立つやつをお願いして、
おすすめの串を2本ほど。
「もし俺が仙台に単身赴任してたら、
月曜から木曜は、
この店で一杯だけ飲んでから帰るんだろうな」
そんな「ありもしない未来」を、
勝手に組み立てて楽しむ。
隣の席の会話には耳を貸さない。
カウンター越しの厨房の音をBGMに、
ただ、自分の内側の声だけを聞く。
4軒目:「居酒屋ちょーちょ」で、今日の城を締める
今夜の最後は、
「居酒屋ちょーちょ」。

創作系の一品が並ぶカウンターに座り、
最後の一杯を注文する。
焼酎ロックか、日本酒の〆の一合。
肴は、
ポテトサラダか、唐揚げか、刺身盛りあたりを一皿。
どれか一つに決めて、
それ以上は増やさない。
「ここが今夜の天守閣だ。
攻める相手なんて誰もいないが、
俺の中の『どうでもいい悩み軍団』だけは、
だいぶ殲滅できた気がする」
グラスの氷が、
カラン、と鳴ったところで、
この夜のハシゴ酒は終了。
外に出ると、
国分町のネオンと夜風が、
少しだけ優しくなっていた。
日曜:仙台駅で、何もしない旅のエンディング
翌日。
チェックアウトを済ませて、
仙台駅へ向かう。
お土産コーナーで、
牛たんやずんだシェイクを眺めるけれど、
どれも買わない。
代わりに、
昨日の夜に回った店の看板や、
城跡の風景を、
少しずつ思い出していく。
「この二日で、俺はほとんど何もしていない。
有名な観光地も、ほとんど見ていない。」
「それでも、
仙台の城下町の風と、
夜のハシゴ酒の記憶だけで、
しばらくはまた働けそうな気がするんだから、
旅ってやつは、ずいぶんコスパがいい。」
そんなことを考えながら、
札幌行きの便に乗り込む。
窓の外に広がる空を見上げながら、
ふと思う。
「何もしない贅沢ってのは、
どこへ行くかじゃなくて、
何をしないかを決めることなのかもしれんね。」
飛行機が雲の上に出る頃、
もう次の妄想トラベルの行き先を、
心の中で検索し始めているオジサンであった。
■ 旅のまとめ
旅先: 仙台(札幌から飛行機+電車で約3〜4時間)
宿泊: ホテルJALシティ仙台(仙台駅ペデストリアンデッキ経由・徒歩圏)
名物: 仙台牛たん、笹かまぼこ、日本酒(宮城の地酒)、焼き鳥
体験: 仙台城跡で「何もしない」ベンチ時間、城下町エリアのブラブラ散歩、エキナカカフェでぼーっとする時間、国分町〜仙台駅前エリアでひとりハシゴ酒(夜酔→鳥たかハナレ→Yotsuba→Izakaya Chōcho)
予算: 約40,000〜50,000円前後(札幌からの往復航空券+仙台空港〜仙台駅の電車代+JALシティ仙台1〜2泊+ハシゴ酒4軒でちびちび飲み食い)


