山形・銀山温泉「湯けむりと昭和のオジサン」になる週末
今週も待ちに待った、金曜の定時。
パソコンの電源を落とした瞬間、
俺の心もいったんシャットダウンする。
「お先に失礼します」と言いながら、
心の中ではこう付け足している。
「今週はここまで。
続きは、湯けむりの中で考えます。」
行き先は、山あいの小さな温泉街。
銀山川の両側に、木造旅館がびっしり並んでいる、
あの銀山温泉だ。
翌日の早朝から札幌から列車や飛行機を乗り継いで、
山形へ向かう道すがら、
まだ俺はただの「仕事帰りのオジサン」。
でも、頭の中ではすでに、
湯けむりとガス灯の明かりの中を歩いている。
土曜昼:大石田駅から、昭和の匂いがしてくる
乗り継いだ先のローカル線の車窓から、
田んぼや山の稜線が見えてくる頃、
空気が少しだけ「素」の匂いに戻っていく。
銀山温泉の最寄りは、大石田駅。
そこから路線バスに乗り換えて、山あいの温泉街を目指す。

駅前のロータリーは、派手な看板もなく、
「観光地の入口」というより、
昔から変わらない「町の玄関」という趣き。
バスに揺られて30分ほど。
山をくねくね抜けていくにつれて、
日常のざわざわが少しずつ後ろに遠ざかっていく。
「俺は今、
どこかの会議室から、
ゆっくりフェードアウトしている最中だ。」
そうやって自己暗示をかけていると、
突然、視界の先に
「これぞ温泉街」という景色が現れる。
土曜午後:石畳と木造旅館の中で「昭和ごっこ」
銀山川の両側に、
三階建て、四階建ての木造旅館が並ぶ。
外壁は黒く、窓枠は白く、
軒先にはそれぞれの宿の名前が、
誇らしげにぶら下がっている。

石畳の道を、
ガラガラとキャリーバッグを引きながら歩く自分が、
急に「観光客」ではなく、
どこかの時代から迷い込んだオジサンに見えてくる。
宿のチェックインはまだ少し先にして、
まずは足湯に寄り道だ。

温泉街の途中にある足湯に腰掛けて、
靴下を脱いで、
足だけ先に温泉に浸ける。
じわっと暖かさが上がってきて、
足だけ先に一週間分の疲れを溶かしていく。
「ここで終わっても、
もう十分じゃないか。」
そんなことを思ってしまうくらい、
足湯の破壊力は強い。
土曜夕方:湯けむりの中で、時間の感覚をなくす
チェックインの時間になったら、
今日の寝床へ向かう。

本日の宿:【本館古勢起屋】へ
定員2名以上の宿が多いなか、ここはオジサン一人でも受け入れOKだ。
木造の玄関をくぐると、
畳の匂いと、
かすかな温泉の匂い。
靴を脱ぎ、
スリッパに履き替えた瞬間、
外の世界との境目がくっきりと引かれる。
部屋に案内され、
窓から川を見下ろす。
「これが今夜の城下町か。」
そう思うと、
ふっと口元が緩む。
浴衣に着替えて、
さっそく大浴場へ。

木の桶の音、
湯が注ぎ込む音、
誰かの小さなため息。
湯船に身体を沈めて、
天井を見上げる。
観光地の「見どころ」は、
この湯船の中に全部まとまっている気がしてくる。
土曜夜:ガス灯の下で「何もしない自分」を許す
夕食のあと、
浴衣姿のまま街へ出る。
日が暮れると、
温泉街のガス灯に火がともり、
木造旅館の窓から柔らかい灯りが漏れてくる。
川の音と、
カメラのシャッター音と、
下駄のカランコロンという音。

昭和でも大正でもない。
令和のただのオジサンが、
「それっぽい顔」で歩いている。
「ここまで景色が整ってると、
逆に何もしなくていいから楽だな。」
観光パンフレットに載っている
「映えるスポット」は全部同じ通りに並んでいる。
ということは、
一歩も動かずに、
全部満喫したことにできるのだ。
橋の欄干に肘をついて、
湯けむりと灯りを眺める。
写真を撮る人たちを横目に、
俺はあえてスマホをポケットから出さない。
「ここで撮った写真より、
ここで何もしていなかった自分を覚えておきたいな。」
そんなことを考えているうちに、
夜はゆっくりと深くなっていく。
日曜朝:帰りたくないんじゃない、「戻りたくない」だけ
朝。
窓を開けると、
夜とは少し違う顔をした温泉街が広がっている。
朝風呂で目を覚まし、
布団を畳んで、
湯上がりの身体で畳の上に座る。
「この週末、俺は何をしたか?」
と問われたら、
答えに困る。
観光地らしい場所を
必死で走り回ったわけでもなく、
特別な体験をしたわけでもない。
ただ、
湯けむりの中で、
自分をちょっとだけ甘やかしただけだ。
でも、
それで十分だと思えるのが、
この歳のいいところでもある。
チェックアウトを済ませ、
石畳をゆっくり歩きながら、
また足湯の前を通りかかる。
「また来よう」ではなく、
「またサボりたくなったら来よう」
そう心の中で呟いて、
大石田駅行きのバスに乗り込む。
■ 旅のまとめ
旅先: 山形・銀山温泉(最寄駅:大石田駅からバス約30〜40分)
テーマ: 湯けむりと昭和のオジサンになる週末
宿泊:【本館古勢起屋】
大正ロマンを感じる木造の外観と、
川沿いに面した客室が魅力の温泉旅館。
内湯・露天ともに源泉かけ流しで、
浴衣でそのまま温泉街の散歩に出られる「湯けむり拠点」です。
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【本館古勢起屋】
名物:
- 湯けむりに包まれた温泉街の夜景
- 木造旅館のお風呂(内湯・露天)
- 足湯ベンチでの「何もしない時間」
- 地元食材を使った和会席・郷土料理
体験:
- 石畳とガス灯の温泉街を浴衣でそぞろ歩き
- 足湯でぼんやり川を眺める「オジサンタイム」
- 早朝の温泉街を散歩しながら、
誰もいない路地でひとり黄昏れる
予算の目安:
- 宿泊:一泊二食付きで 1人あたり 50,000円前後(時期・プランによる)
- 交通:最寄駅までの往復+駅〜温泉街バス代
(「週末のご褒美旅」として組みやすいレンジ)
お勧めのお宿:
※イメージ画像はすべて公式HPから引用しています。
写真には公式HPがリンクされているので、旅の参考にしてください。

